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Filtre::フィルタ
Sun, 01 Jul 2007 06:17:12 +0000

毎日石川さんは電車に乗ると窓にある席に座ったら駅で買った経済新聞をゆっくり折って手提げ鞄に入れてしまってから巻き煙草をジャケットの懐から出してタバコを一本巻けて始める。タバコ袋には巻紙も入れてある。石川さんは「夜明けの歌」を口遊みながら巻紙を一枚ずつ引き離してバッグの上にエアコンの風で飛ばないように几帳面に置いておく。タバコを一撮取って巻紙の一枚に一線をしてそのタバコをつけてからフィルタの小箱をポケットから出して、一手で箱を開けフィルタを一本出して箱を閉めポケットに繰り戻す。それで巻くということは本当に始まるらしい。


タイミングのいい石川さんは、タバコを一本巻き切ったらしばしば電車が降りる駅に着く。石川さんがあたふたと思わずに煙草袋を締めて懐に戻し込んで降りる。エスカレーターで巻いた煙草を口につけながらたまたま「修羅の花」を歌う。駅前に表れるとすぐ近くにある灰皿に向かって歩く。「死んでいた朝に弔いの雪が降る」とライターを出し煙草に火を付けてから一服を吸った途端噎せ返る。火を付けたばかりであるものの石川さんがその煙草を灰皿に投げる。


石川さんは頭のいい人なのにどうしてもいつも忘れていることがある。石川さんは煙草を吸う人ではないってこと。